プレスリリースを何度配信しても全く反応がない。メディア掲載の目標を達成できず、上司からのプレッシャーが日に日に強くなっている。そんな状況に陥っているBtoB広報担当者にとって、記者への直接的な営業電話は最も確実に成果を生み出せる手法の一つです。
しかし「記者に営業電話なんてかけて大丈夫なのか」「断られるのが怖い」と躊躇している方も多いでしょう。実際には、正しいアプローチ方法を身につければ、記者との関係構築は決して難しいものではありません。今回は、今月中にメディア取材を獲得するための具体的な営業電話術を、実践的なステップで解説していきます。
記者への営業電話が成功する前提条件を整える
ターゲット記者の属性を徹底分析する
営業電話で成果を出すためには、まず「誰に」電話をかけるかの選定が最も重要です。業界専門紙の記者であれば、あなたの業界に関する深い知識を持っている一方で、一般紙のビジネス記者は幅広い分野をカバーしているため、説明の仕方を変える必要があります。
記者の過去の記事を最低10本は読み込み、その記者が関心を持つテーマや切り口を把握しましょう。例えば、DX関連の記事を多く書いている記者であれば、あなたの会社のデジタル化への取り組みや業界のデジタルトランスフォーメーション事例に興味を示す可能性が高くなります。
電話をかける最適なタイミングを見極める
記者への電話は、タイミングが成否を大きく左右します。一般的に火曜日から木曜日の午前10時から11時、午後2時から4時が最も効果的とされています。月曜日は週の始まりで忙しく、金曜日は締切に追われている記者が多いため避けるべきです。
また、業界のイベントや展示会の直前・直後は記者も多忙になるため、そうした時期を避けて電話をかけることで、じっくりと話を聞いてもらえる確率が上がります。メディアの編集カレンダーを把握し、特集企画の準備時期に合わせてアプローチすることも効果的です。
電話前の準備で差がつく資料作成
電話をかける前に、その記者向けにカスタマイズした簡潔な企業紹介資料を用意しておきましょう。A4用紙1枚程度で、会社概要、主力事業、今回提案したい取材内容、なぜその記者に連絡したのかの理由を明記します。
電話中に「資料をお送りしてもよろしいでしょうか」と提案できるよう、PDFファイルとして準備しておくことで、スムーズに次のステップに進むことができます。この資料は、記者がデスクや編集長に企画提案する際の参考資料としても活用されるため、記者の立場に立った構成にすることが重要です。
実際の電話でのトークスクリプトと話法
最初の30秒で興味を引く自己紹介術
記者への営業電話では、最初の30秒が勝負です。「お忙しいところ恐れ入ります。○○会社広報の△△と申します。□□様の××に関する記事を拝見させていただき、ぜひ一度お話をお聞かせいただきたくお電話いたしました」という流れで、相手の過去の記事に言及することで関心を示します。
この時点で「今お時間は大丈夫でしょうか」と確認し、忙しそうであれば「改めてお電話する時間をお聞かせください」と配慮を示すことで、記者に対する敬意を表現できます。押し付けがましくならないよう、常に相手のペースに合わせる姿勢を保つことが信頼関係構築の第一歩となります。
取材価値を3つのポイントで伝える
記者が最も知りたいのは「なぜこの話が記事になるのか」という点です。取材価値を伝える際は、以下の3つのポイントのうち少なくとも一つは明確に提示しましょう。「業界初」「社会的な課題解決」「具体的な数値データ」です。
例えば「弊社が開発した新システムにより、従来3時間かかっていた作業が15分に短縮され、導入企業では作業効率が92%向上しています。この技術は業界では初の取り組みで、人手不足に悩む同業他社からも注目を集めています」といった具体性のある説明が効果的です。
数字を交えることで記者にとって記事化しやすい情報を提供し、業界の課題解決という社会性も同時にアピールできます。この段階で記者の関心を引けなければ、丁寧にお礼を述べて電話を終了し、別の角度でのアプローチを検討します。
記者の質問に対する効果的な回答方法
記者から質問が出た時点で、取材に向けて大きく前進したと考えて良いでしょう。質問に対しては、結論から先に述べ、その後に詳細を説明する「結論ファースト」の回答を心がけます。「詳細は実際にお会いしてお話しできればと思いますが」という前置きで、面談のアポイントメント獲得につなげることも可能です。
もし答えられない質問があった場合は「申し訳ございません。その件については確認してすぐにお返事いたします」と正直に伝え、必ず約束した時間内に回答することで信頼性を示します。知ったかぶりをして間違った情報を伝えることは、今後の関係性に致命的な影響を与える可能性があります。
取材アポイントメント獲得のクロージング技術
相手の都合を最優先にした日程調整
記者が興味を示してくれたら、具体的な面談の提案に移ります。「もしよろしければ、お時間をいただいて詳しくご説明させていただけませんでしょうか。□□様のご都合の良い日時をお聞かせください」と、相手の都合を最優先にした提案を行います。
日程調整の際は、複数の候補日時を提示するのではなく、まず相手の希望を聞くことが重要です。記者の方から「来週の火曜日の午後はいかがでしょうか」といった具体的な提案があった場合は、可能な限りその時間に合わせるよう努力します。柔軟性を示すことで、記者にとって話しやすい相手だという印象を与えることができます。
面談場所とオンライン対応の選択肢提示
2026年現在では、対面取材とオンライン取材の両方に対応できる体制を整えることが重要です。「お忙しい中恐縮ですが、お伺いさせていただくか、オンラインでお話しするか、どちらがよろしいでしょうか」と選択肢を提示し、記者の働き方に合わせた柔軟な対応を示します。
オンライン取材を選択された場合は、ZoomやTeams等の使用ツールを確認し、事前に接続テストを行っておくことでスムーズな進行を確保します。対面取材の場合は、記者の都合に合わせて出向くことを基本とし、場所についても相手の希望を優先します。
電話終了前に確認すべき重要事項
取材アポイントメントが取れたら、電話を終了する前に必ず以下の点を確認しておきましょう。面談日時、場所(またはオンラインツール)、所要時間の目安、当日持参する資料、記者側で準備していただきたい事項があれば、それらを明確にしておきます。
「本日は貴重なお時間をありがとうございました。明日中に詳細な資料をお送りいたします。何かご不明な点がございましたら、いつでもお気軽にご連絡ください」という形で、次のステップを明確にして電話を終了します。この時点で、相手のメールアドレスも確認しておくことを忘れてはいけません。
営業電話の成功は、相手の立場に立った配慮と、明確な価値提案の組み合わせで決まります。記者との信頼関係は一度の電話で完結するものではなく、継続的なコミュニケーションを通じて構築されるものだということを忘れずに。
電話後のフォローアップで関係性を深める
24時間以内の資料送付とお礼メール
営業電話が終了したら、24時間以内に約束した資料を送付し、同時にお礼のメールを送信します。メールの件名は「【○○会社】本日はお時間をいただきありがとうございました」といった形で、会社名を明記し、感謝の気持ちを表現します。
送付する資料には、電話でお話しした内容をより詳しく説明した資料に加えて、関連する業界データや他社事例なども含めることで、記者が記事を書く際の参考情報として活用してもらえます。詳しくは「BtoB広報のメディアリスト構築完全手順|プレスリリース配信先を戦略的に選定・管理する実践ガイド」で解説している通り、継続的な関係構築が重要になります。
面談前の最終確認と準備完了の連絡
面談予定日の2日前には、日時と場所の確認メールを送信します。「お忙しい中恐れ入ります。○月○日○時からお約束をいただいております件でご連絡いたします」という形で始め、当日の詳細な段取りを確認します。
この時点で、取材に応じる役員や担当者のプロフィール、想定される質問と回答例、関連する最新のプレスリリースなどを準備しておくことで、当日スムーズに取材が進行します。記者にとって有益な取材になるよう、事前準備を怠らないことが信頼関係の維持につながります。
取材実施後の継続的な関係維持
実際に取材を受けた後も、関係性を継続することが重要です。記事が掲載された際は必ずお礼の連絡を入れ、SNSでの記事シェアや社内での共有なども行います。また、3ヶ月に1度程度のペースで、業界の最新動向や自社の新たな取り組みについて情報提供を行うことで、継続的な関係性を維持できます。
記者との関係が深まれば、今度は記者側から「こんな企画があるのですが、コメントをいただけませんか」といった相談が来るようになります。このような相互関係が構築できれば、安定的なメディア露出を確保することが可能になります。
業界別・記者タイプ別の電話アプローチ戦略
専門紙記者への深掘りアプローチ
業界専門紙の記者に対しては、より専門性の高い内容でアプローチすることが効果的です。業界の課題や最新技術動向について深い理解を前提とした会話を展開し、「業界の○○という課題について、弊社では△△という解決策を開発しました」といった、専門的な切り口で興味を引きます。
専門紙記者は読者層が明確であり、業界の専門家や関係者が主な読者となります。そのため、技術的な詳細や具体的な数値データ、導入事例などを豊富に用意しておくことで、より深い取材につなげることができます。また、業界団体の動向や競合他社の状況についても情報を整理しておくことが重要です。
一般紙ビジネス記者との効果的な対話術
一般紙のビジネス記者に対しては、業界の専門用語を使わずに、社会全体への影響や消費者にとってのメリットを中心に説明します。「この技術により、一般消費者の○○に関する負担が△△%軽減されます」といった、より広い視点での価値提案が効果的です。
一般紙の読者は業界の専門家ではないため、記者自身も読者に分かりやすく説明できる材料を求めています。複雑な技術や業界特有の課題については、身近な例に置き換えて説明することで、記者の理解を促進し、記事化への意欲を高めることができます。
Web媒体記者のスピード感に対応する
Web媒体の記者は、紙媒体と比較してより迅速な情報発信を求められています。そのため、電話での初回接触から取材実施まで、できるだけ短期間で進めることが重要です。「来週にも記事化していただけるような内容でして」といった形で、スピード感のある対応が可能であることをアピールします。
Web媒体では、記事公開後の反響や拡散状況も重要な指標となるため、SNSでの話題性や読者の関心を集めやすいテーマであることも併せて提案すると効果的です。また、Web記事用の画像素材や動画コンテンツなども事前に準備しておくことで、記者の記事作成をサポートできます。
| 媒体タイプ | 重点ポイント | 準備資料 | フォロー頻度 |
|---|---|---|---|
| 業界専門紙 | 技術的詳細・業界動向 | 技術資料・導入事例 | 月1回程度 |
| 一般紙 | 社会的影響・分かりやすさ | 概要資料・市場データ | 3ヶ月に1回 |
| Web媒体 | 話題性・スピード感 | 画像・動画・SNS素材 | 2週間に1回 |
よくある営業電話の失敗パターンと対処法
一方的な売り込みになってしまう失敗
最も多い失敗パターンは、記者の関心や都合を無視して、自社の言いたいことだけを一方的に話してしまうことです。「弊社の新サービスは業界初の機能を搭載しており…」と延々と説明を続けても、記者にとって記事価値があるかどうかは別問題です。
この失敗を避けるためには、常に記者の立場に立って「この情報は読者にとって有益か」「記事化しやすい情報か」を考えながら話を進めることが重要です。記者から質問や相槌がない場合は、「何かご不明な点はございませんか」と確認し、双方向のコミュニケーションを心がけます。
事前準備不足による説得力の欠如
記者から「具体的なデータはありますか」「導入企業はどちらですか」といった質問に対して、「後日確認してお返事します」を繰り返すと、準備不足の印象を与えてしまいます。営業電話をかける前に、想定される質問とその回答を少なくとも10パターンは用意しておきましょう。
特に数値データや事例については、開示可能な範囲を事前に社内で確認し、記者の質問にその場で答えられるよう準備しておくことが重要です。詳しくは「BtoB広報のプレスリリースが全く取り上げられない時の緊急改善策|記者に「読ませる」文章術と配信タイミング最適化」でも説明している通り、具体性のある情報提供が記者の信頼を獲得する鍵となります。
フォローアップの不備による機会損失
営業電話で好感触を得たにも関わらず、その後のフォローアップを怠ってしまい、結果的に取材につながらないケースも多くあります。「資料をお送りします」と約束したにも関わらず、数日経ってから送付したり、面談日程の確認を直前まで行わなかったりすると、記者の印象は悪化します。
約束したことは必ず実行し、できれば期限よりも早めに対応することで、信頼性の高い広報担当者として認識してもらえます。また、取材が実現しなかった場合でも、定期的な情報提供を続けることで、将来の取材機会を創出することが可能です。
記者との関係構築は、短期的な成果だけでなく、長期的なメディアリレーション戦略の基盤となります。一度の電話で関係が終わるのではなく、継続的なコミュニケーションを通じて信頼関係を築くことが、安定的なメディア露出確保の近道です。
BtoB広報における営業電話は、正しい手法を身につければ確実に成果を生み出せる強力なツールです。今回紹介した電話術を実践し、まずは今月中に3件のメディア取材アポイントメント獲得を目標に取り組んでみてください。記者との信頼関係が構築できれば、継続的なメディア露出確保への道筋が見えてくるはずです。
ただし、営業電話だけでは限界があることも事実です。詳しくは「BtoB広報の効果を最大化する戦略設計|営業連携で今すぐ始められる成果直結の手法」で解説している通り、包括的なPR戦略の中で営業電話を活用することで、より大きな成果を実現できるでしょう。
よくある質問
記者に営業電話をかけるのは迷惑ではありませんか?
適切なタイミングで価値のある情報を提供する電話であれば迷惑ではありません。記者も常に新しいネタを探しているため、業界の動向や興味深い取り組みについての情報は歓迎されます。ただし、相手の都合を最優先に考え、押し付けがましくならないよう配慮することが重要です。
電話で断られた場合、再度連絡してもよいですか?
即座に断られた場合は、3ヶ月程度期間を空けて、別の角度から再アプローチすることは可能です。その際は前回の電話について触れず、新しい情報や企画を持って連絡しましょう。ただし、明確に「今後連絡不要」と言われた場合は、その意向を尊重することが大切です。
どの程度詳しい情報まで電話で話してよいですか?
電話では概要レベルの説明に留め、詳細は面談で話すという流れが効果的です。機密情報や具体的な数値データについては、事前に社内で開示範囲を確認しておき、必要に応じて「詳細は面談にてお話しします」と伝えましょう。
記者から「忙しい」と言われた場合の対応方法は?
「申し訳ございません」とお詫びした上で、「改めてお電話する時間をお教えいただけませんでしょうか」と相手の都合を聞きます。もしくは「メールで概要をお送りしてもよろしいでしょうか」と提案し、次のコンタクト方法を確保しましょう。
営業電話の成功率を上げるコツはありますか?
記者の過去記事をしっかりと読み込み、その記者の興味関心に合わせた話題を提供することが最も重要です。また、業界の動向や他社の動きについても把握しておき、自社の取り組みがどのような文脈で注目されるのかを説明できるよう準備しておきましょう。
オンライン取材と対面取材、どちらを提案すべきですか?
記者の都合を最優先に考え、選択肢を提示するのがベストです。「お忙しい中恐縮ですが、お伺いするかオンラインか、どちらがご都合よろしいでしょうか」と聞けば、記者が選びやすくなります。どちらでも対応できる準備を整えておくことが重要です。
取材が実現しなかった記者との関係はどう維持すればよいですか?
3ヶ月に1度程度のペースで、業界の最新動向や自社の新たな取り組みについてメールで情報提供を続けましょう。押し付けがましくならないよう、「ご参考まで」という形で簡潔に送付し、継続的な関係性を維持することが将来の取材機会につながります。
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